超軽量動力機 及び ジャイロプレーン情報



● 航空協会便り(初春号)



                         平成9年2月13日発行

                         財団法人 日本航空協会

超軽量動力機/ジャイロプレーン界における
1996年の回顧と1997年の展望

1996年における超軽量動力機及びジャイロプレーンの世界は大きく変貌を遂げた年
でした。その一番は永年の懸案事項であった超軽量動力機及びジャイロプレーンにおけ
る機体自重制限が緩和されたことでしょう。
特に、超軽量動力機においては今まで自重制限により型式認定が取得できなかった機体
においても超軽量動力機としての認定が取れ、技量認定で飛行許可が取得できるように
なりました。
この機体自重制限の緩和を行うに当たって、新たに認められた自重180s〜225s
の機体及び密閉型操縦席の機体に対しては、別カテゴリーの機体としてクラス−Uとし
ての区分設定を行い技量認定に新たな基準が設定されました。
これを受けて航空協会では「指導員規定」及び「技量認定規定」を改訂し、指導員の実
技試験においては、全国各地区から選ばれた29名の方に研修を受けていただき、指導
員の実技試験のやり方について討議していただき新たな指導員実技試験要領ができあが
りました。
また日本マイクロライト航空連盟では、これらの制度改正に併せて操縦訓練の標準化と
レベルの向上を図るために「標準訓練教程」を設定し認定スクール制度を発足させまし
た。
97年にはこれらの制度が定着しその成果が現れ日本のマイクロライト/ジャイロ界の
発展と向上に、また事故の防止に大いに貢献してくれるものと期待されます。
機体の型式認定制度においても、自重制限の緩和にあわせてその認定方式を改正して、
いままでは実機と同様に殆ど装備品の交換が認められなかったものが、今後は性能に影
響する装備品についてはオプションの認定を受ければ自由に交換することが可能になり
、また性能に影響しない装備品については安全管理者の確認を受ければ取り付けること
ができるようになりました。(但し制限重量内に限る)
これにより今まで勝手に取り付けることができなかった「そり」や「スターター」等は
その重量と取り付け状態を安全管理者が確認すれば認定を受けなくても取り付けること
ができるようになりました。
一方、機体認定審査を厳格に行うために適合検査においては飛行試験を実施して機体の
操縦性や安定性及び性能について確認するようになりました。
これにより超軽量動力機やジャイロプレーンの最低限の安全性が確認され、また機体仕
様の統一が図られるようになり(安全性が保証されたものではない)非常に初歩的な問
題による不具合や事故の防止に役立つものと期待されます。



マイクロライト界において特記すべきことは、初めてマイクロライト日本選手権大会が
開催されたことでしょう。
この大会は全国統括団体としての連盟の求心力を高めるためにも、またマイクロライト
の認識を高めるためにも非常に意義のある大会であり、これが成功裏に終了したことは
日本マイクロライト航空連盟にとっては大きな功績となったものと思います。
今年は、北海道で開催されるように検討されているようですが、連盟の組織力の強化と
マイクロライトの市民権の確立のために、是非この大会を継続的に開催していただきた
いとおもいます。

1997年の日本航空協会における重点取り組み事項は以下の項目です。これらの項目
は全て相互に関連しておりますので単独で実現できるものではなく総合的に取り組んで
いかなければならないものです。また航空協会単独では決して実現するものではなく、
日本マイクロライト航空連盟と日本自作航空機連盟の全面的なバックアップがあって初
めて実現が可能なことですので、皆様方の御支援をお願い致します。

 1.空域の拡大と二地点間飛行実現への取り組み
 2.優良クラブ認定制度の導入
 3.飛行許可一括申請制度の導入
 4.新制度の定着
 5.違法飛行の撲滅
 6.事故の防止

認定証の変更

先の「航空協会便り」でお知らせ致しましたように、航空協会で発行している超軽量動
力機及びジャイロプレーンに係わる各種の認定証の様式を変更することになりました。
新しい様式はプラスチック製でクレジットカードサイズの顔写真入りになり、その種類
は指導員−T、指導員−U、安全管理者及び技量認定の4種類で、それぞれ超軽量動力
機とジャイロプレーンについて発行いたします。
新しい認定証は平成9年度(平成9年4月1日より)の更新分から発給いたしますが、
希望者に対しては実費で臨時更新を行います。また技量認定については更新がありませ
んので新規認定分からになりますが、既に技量認定をうけておられる方については希望
に応じて実費で新しい認定証の交付を行ないます。(手続きについては次回ご案内いた
します)古い認定証はその有効期限内においてはもちろん有効です。特に技量認定証に
ついては有効期限がありませんので、古い認定証も新しい認定証もどちらも有効になり
ます。
将来的にはこの技量認定証と健康診断書と併せて有効期限付の認定証に切り替えていき
たいと考えております。



機体登録制度の改正

現在超軽量動力機及びジャイロプレーンの機体登録数は約1700機になりますが、そ
の実態は明確ではありません。一度登録された機体でも所有者が変更になったり、廃却
になった場合には変更登録や抹消登録を行うように規定されておりますが、これらの登
録が実施されていない事が多いため機体登録原簿と実態がかなり食い違ってきておりま
す。
また未登録の機体や識別記号未表示の機体が相当数あるように推定されますので、今後
超軽量動力機やジャイロプレーンの健全な発展を図り、航空スポーツとしての市民権を
確立してゆくためにはどうしても改善をしてゆかなければならないところです。
これらの機体登録を確実に実施していただくために、平成9年度から「機体登録証」を
発行することになりましたのでご協力下さい。今後(平成9年4月1日以降)飛行許可
申請時にはこの登録証の写しを添付することになります。既に機体登録済みの方につい
ては要求していただければ新しい登録証をお送り致しますのでご連絡ください。
また機体識別記号の表示方法についてはあまり統一されておりませんでしたので、今後
識別記号の表示位置を下記の様に統一し文字の大きさも変更致します。特に左主翼下面
の表示は今まで規定されていなかったもので、大きな文字で飛行中にも地上から容易に
識別できるようにしたものです。

 1.識別記号(小):文字高さ100_、幅56_、太さ20_
           垂直尾翼両側(垂直尾翼のない機体は胴体両側)
 2.識別記号(大):文字高さ200_、幅120_、太さ33_
           左主翼最下面(主翼にスペースが無い機体は胴体最下面)
   (機体によってシールを貼り付けるスペースが無い場合にはご相談下さい)

これらの識別記号シールは、今後一文字づつ作成いたしますので再発行もできるように
なりました。またすでに登録済みの機体で識別記号を表示されている機体でも左主翼最
下面に表示する識別記号は新たに表示していただかなければなりません。これらの規格
に合わせた文字シールは航空協会で作成いたしましたので必要な方はご連絡下さい。

指導員及び技量認定クラス−Uへの限定変更

先の航空協会便りでお知らせ致しましたように、今回新たに設定されたクラス−Uへの
限定変更(経過措置)の受付は3月31日までです。
平成8年12月1日の時点で、経過措置としての限定変更のための条件を満足している
方は限定変更申請用紙(経過措置用)を用いて限定変更の申請をして下さい。
3月31日を過ぎますと通常の技量認定又は指導員認定の手順で審査が行われますので
限定変更を希望される方は必ず期限内に申請するようにお願い致します。
この経過措置として限定変更が行える条件については、航空協会便り(初冬号、11月
11日発行)で詳細に説明しておりますので参照して下さい。



型式認定におけるオプション部品の取り扱いについて

運輸省航空局技術部航空機安全課長通達「試験飛行等の許可について」が、平成8年8
月2日に改正されたことを受け、型式認定審査委員会で次の内容が決まりました。
超軽量動力機・ジャイロプレーンで飛行を楽しむにあたり、型式認定済みの機体に装着
・交換可能な部品をオプション部品として、その範囲が拡大され、なおかつ明確になり
ました。但し運用にあたっては安全管理者の確認が必要になります。

装着できる部品は?

装着・交換できるオプション部品は次の2種類に分けられます。

1)認定オプション部品(装着により飛行性能に影響を与える部品)
   型式仕様書にオプション部品として認定され記載されていない場合は、装着する
   事が出来ない。
   例:@エンジン Aプロペラ Bフェアリング Cカウリング
     Dジャイロプレーンのローターブレード E体重移動操縦型の翼 等
2)非認定オプション部品(装着により飛行性能に影響を与えない部品)
   型式仕様書にオプション部品として記載されていなくても、装着することが出来
   る。
   例:@スキー A車輪用スパッツ B電動スターター Cブレーキ
     D計器類 Eバルーンタイヤ 等

但し、認定・非認定どちらの部品であってもオプション部品として部品を装着・交換し
た機体の自重が、仕様書の自重に仕様書の最大離陸重量の5%の重量を追加した重量以
下であり、かつ単座180s・複座225s以下とする。
オプション部品として同一型式で装着可能なエンジンは、基本仕様に対して出力の差が
20%以内とし、型式認定時に認定オプション部品として認定されていること。
ジャイロプレーンのローターブレード・体重移動型超軽量動力機の翼は、型式認定時に
交換するローター・翼を装備した性能が確認され認定されれば、同一型式の中で装着が
可能とする。

安全管理者の確認は?

上記のオプション部品を装着・交換して飛行許可を取得し飛行を楽しむためには、基本
的には従来と同様に次のような安全管理者による確認が必要となります。
具体的には、航空法11条1項但し書きに係わる試験飛行等の許可申請を行う際に、安
全管理者が申請する機体に関して、次の項目を追加して確認する必要があります。
(a)装着されているオプション部品が認定が必要な部品かどうか?
(b)必要であれば仕様書で認定されているかどうか?
(c)オプション部品を装着した自重が要件の規定内に収まっているかどうか?
(d)オプション部品が、飛行に適した状態でなおかつ確実に取り付けられているか?
以上の内容を追加確認した後「超軽量動力機/ジャイロプレーン型式確認書」「航空機
の現状確認書」を作成することとなります。‘航空機の現状’を確認する際、オプショ
ン部品装着等により確認した機体の自重が、仕様書に記載されている自重に対し変化し
た場合、その原因となった新たに装着した部品名を記入する必要があります。また、自
重の増加に伴い、翼面荷重が旧要件を越えても、自重増加の値が上記要件内であれば、
問題ありません。(4月以降は「型式確認書」及び「航空機の現状確認書」を1つの様
式にまとめ、追加部品の内訳が記入できる「超軽量動力機/ジャイロプレーン機体確認
書」に変更致します)



【参考例】

 型式名      :クイックシルバー式 MXUスプリントTop−R582L型
 型式番号     :JA95−RD−006

 自重(仕様書)    :168.0s
 最大離陸重量(仕様書):372.5s

 上記仕様の場合、オプション部品装着により
 最大 168.0s+372.5s×5%=186.6s
 の自重まで飛行許可申請が可能となる。

 具体例として安全管理者が確認した機体が次の内容の場合、航空局通達の要件の範囲
 内と判断される。
   自重         :185.5s
   主翼面積       :16.76u
   翼面荷重       :11.07s/u
    オプション装着部品一覧
     @認定オプション部品  :カウリング    +10.5s
     A非認定オプション部品 :バルーンタイヤ  + 7.0s

オプション部品認定におけるエンジン馬力は?

エンジンの公称馬力は、同一型式の中にもキャブレター・点火系統等の違いにより複数
の値を表示しているものがある。オプション部品として搭載変更可能なエンジンは基本
仕様に対して出力の差が20%以内と決められているが、同一型式の中で複数の馬力表
示があると、オプションとして搭載可能かどうかの判断が出来ない場合があるので、型
式認定審査委員会で数値の扱いを明確にした。
同一型式内に複数の仕様がある場合は、その平均値とし小数点以下第1位を四捨五入す
ることとする。
ロータックスエンジンの馬力数値を次のように定めたので、参考として記載する。
また、今後発行される仕様書にはエンジン馬力数値が記入される。

ロータックスエンジン型式名 馬力(HP)
277 26
377 35
447 41
462 52
503 48
532 63
582 64
618 74
912 80
914 100


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